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KYOTO

​SH

四条通りと堀川通りの交差点にほど近い、SRC造10階建の建物、京都では希有の大スケールの中に存在する賃貸集合住宅のリノベーション計画です。

この都市的なスケール感と喧噪に対し、例えば嵯峨野の竹林に感ぜられる瑞々しさを、円山応挙の描いた「雨竹風竹図」の静寂感の中に体現するため、3色の透明ガラスタイルを点描のように用いた透明感のあるガラススクリーンをクランクさせながら空間に注意深く配することで、ひとつの京都らしい「庭」や「茶室」を想わせる繊細でストーリーのある空間を表現することを試みました。

 

円山応挙の「雨竹風竹図」において、墨の濃淡や、かすかな色というのは、竹自体の存在感を表現しているというよりも、むしろ、竹と応挙の間の「空気の質感」を表現したものであると解釈しました。その上で、最初に原画を8万個の領域に分割し、次に、それぞれのエリアの空気の質感に近い色を「透明」「黄緑」「緑」から選ぶことにしました。具体的には原画をモザイク処理しながら、エリア毎の色を、3色に近似させていく作業を行いました。これにより絵画という紙の上にのった「色」を、ガラススクリーンという「映像」・「光」へ変換しています。点描と同じ手法です。

 

コスト及び施工性の問題から、ガラスタイルの貼付けが現場施工となりました。そのため、1枚1枚ではなく、7枚×7枚のシート貼りにすることになりました。これにより逆に「雨竹風竹図」をそのまま再現するのではなく、原画のエッセンスである「竹と応挙の間の空気の質感」を表現することを目指しました。

原画を15cm角のエリア分けし、それを3色のタイルの混合比を変えた9種類のシートに近似、置き換えました。ただし、同じ混合比のシートといっても、色配列が同じものはなく、また、タイルの脚のストライプ模様も縦・横とランダムになるため、同じシートはありません。

 

結果として、8万個の光点の色を全てこちらの意志で決めることは出来ませんでしたが、これは、応挙も自然のありさまをコントロールすることは出来なかっただろうけれど、つまり、竹の枝振りまではコントロール出来なかったけれど、雨竹風竹図を描いた季節や時間、天候、そして、全体の構図などは作為によるものであり、結果的にはそこにある空気感を描ききったように、このガラスタイルスクリーンは設計者の意図に忠実なものであり、この空間に同じ空気感をもたらします。

所在地:京都市

主要用途:住宅

構造規模:SRC造10階建の5階部分

専有面積:47.0m2

※内装リノベーション

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